2016年7月24日日曜日

第2回 ヨガ×ドイツ語 プロ講師の知 ご報告

519日テンプル大学でおこなった第2回ジンルイカフェでは、ヨガ講師&僧侶のガッソ有香さんと、ドイツ語講師の濱野英巳さんをお招きし、「教える・学ぶ」をテーマにお話を伺いました。

ご来場くださった方々の顔ぶれは第1回とはほとんど異なりましたが、20人程度と前回とほぼ同じ人数でした。



ヨガとドイツ語というまったく違う分野でも、生徒や学生が自分と向き合ったり自分で学べる場をつくることの重要性や、学ぶ人どうしの関係性づくりや、身体をほぐす大切さなど、教えるにあたってのエッセンスは共通しているところがありました。

濱野さんは、自分がいなくても学生だけで授業が成立しているときがうまくいっている時とおっしゃり、ガッソさんも「消えるインストラクターになりなさい」というご自身の先生の言葉を大切にされていて、先生がいなくても学べるような環境作りを心がけているとのお話でした。自律した学習者を育てることが教育の目的であると再認識しました。




また、学び続けていないとインプットとアウトプットのバランスが崩れて教えるのが苦しくなる(ガッソさん)、教える側も試行錯誤を続けていないと伝わらない(濱野さん)、というお話も。教える人も新たなことに挑戦し続けることが大切なのだと感じました。



ヨガでポーズが止まっているようにみえても呼吸は続いておりエネルギーが動いているという視点(ガッソさん)や、語学の授業でプレゼンがうまくできない時には、発表者本人ではなく聴いている側の無意識の体の姿勢を指摘するなど、問題の焦点をずらすことで環境整備して学びをうながす、という発想(濱野さん)も興味深かったです。

次回ジンルイカフェは、201723月頃を予定しています。少し先になりますが、ゆる~く続けてまいりますので、引き続きご期待ください



2016年5月14日土曜日

ヨガ×ドイツ語~人類学が切る、プロ講師の知【5月19日(木)19:00~】ご案内第2回

間近に迫った第2回のジンルイカフェ。ヨガと仏教? 体で学ぶ外国語? 異色の組み合わせを実践されている、ガッソ有香さんと濱野英巳さんに登場していただきます!

ガッソ有香さんさんは、ヨガ講師であり僧侶であり、仏教を取り入れたヨガを教えたりヨガスクールにて講師養成を担当もされています。ヨガの指導の様子の動画も公開されています。

濱野英巳さんは、慶應義塾大学をはじめ多くの大学でドイツ語を教えていらっしゃいます。ドイツ語教育を通じた、異文化間コミュニケーション能力開発・学びほぐしの実践を進められています。

ヨガと仏教? 体で学ぶ外国語? ご参加いただくと、この組み合わせの不思議さが、いつの間にか納得できてしまうかもしれません。

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 ・日時:5月19日(木)19:00~

 ・場所:テンプル大学ジャパンキャンパス麻布校舎6階 608教室

 ・入場無料、お申し込みは不要です。

 ・飲食物の用意はありませんがお持ち込みはご自由になさってください。

 ・お問い合わせ先:jinruicafe@gmail.com

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2016年4月8日金曜日

ヨガ×ドイツ語~人類学が切る、プロ講師の知【5月19日(木)19:00~】

ジンルイカフェ第2回開催が決定しました!

前回の「拳闘家×音楽家~人類学が切る、プロの身体」に続き、今回は「ヨガ×ドイツ語~人類学が切る、プロ講師の知」。

ヨガとドイツ語という、摩訶不思議な組み合わせの対談が今回も実現しました。

「ヨガ部門」で登壇してくださるのは、ガッソ有香さん。各処でヨガを指導したり、ヨガやストレッチのモデルとして活躍されているだけでなく、なんと浄土宗の僧侶の資格もお持ちで、頭を丸めて修行をしたこともあるというというびっくりな経歴をお持ちです。

一方の「ドイツ語部門」で登壇してくださるのは、濱野英巳さん。慶應義塾大学をはじめとして都内複数の大学でドイツ語を教えられているだけでなく、認知心理学もご専門にされており、語学と身体の関係性に着目されているという、これまた素敵なキャリアをお持ちです。

そして司会は文化人類学者の堀口佐知子。日本にあるのに話される言葉はほぼ英語というテンプル大学ジャパンキャンパスの教壇に立つ文化人類学者です。

「教える/学ぶ」をテーマに、今回もジンルイガクが切り込みます!

絶対面白いに決まっているので、ぜひぜひお気軽にご来場ください。


2016年3月22日火曜日

拳闘家×音楽家 ―第3部 見る―

第3部のテーマは、「見る」です。

同じ動きを見ていても、プロと素人では、見ているポイントや深さが違うものです。なんと2人のプロは、「何もしていない(ように見える)とき」が大切だそうです。なぞなぞのようですが、どういうことでしょうか??

まず、「プロはどういうところを見ているか?」という質問から。

ピアニストの佐藤さんによると、最初の音を出す前に集中力を高めて、その場の空気をどれだけ支配できるかが大事だそうです。また、ピアノの音は打鍵した瞬間が一番音が大きくその後は小さくなるだけですが、消えていく音をを聞き届けられるかどうかも大事だとのことです。

この話を聞いて、元ボクサーでトレーナーの加藤さんは、「まったく一緒だ!」と驚いていました。加藤さんによると、パンチが当たったかどうかの前に、相手がパンチを出せず、かつ自分はパンチを出せる場所をとる(=ラインを外す・軸をぶらさない)ことが重要なのです。つまり、互いにパンチを出さないでいる試合は、実はとても濃い闘いが展開されているのです!

ついつい激しい指や拳の動きに注目してしまいがちですが、「何もしていない(ように見える)とき」って大切なんですね☆


そこで次に、ズバリ、どこをどう見れば深くプロ的に楽しめるのか、おすすめの情報と合わせて紹介してもらいました!

佐藤さんは、速い曲よりもゆっくりの曲を聞き比べた方が演奏家の差が出やすいのでいいのではないかと提案してくれました。
おすすめのピアニストは、アンヌ・ケフェレックさんです。ケフェレックさんは、当日上映した映像に映っていた人で、5月の連休に東京滋賀で公演があります。佐藤さんご自身の、ピアノとダンスからなる公演は9月の予定ですが、日程は未定です。気になる方は、佐藤さんのブログをチェックしてください!

続いて加藤さんは、いかに軸がぶれないように選手が工夫しているかを見ることを提案してくれました(それを見られるようになると退屈しない!)。おすすめの選手は、ギレルモ・リゴンドウ選手です(試合の様子はyoutubeにたくさんあります!)。現役の選手では、加藤さんが所属するボクシング・ジムの小原佳太選手です。小原選手の次の試合は4月14日に後楽園ホールで開催されます。


最後に、質問コーナーです。

最初の質問は、「本番でスタミナ切れを感じたときにどうコントロールするの?」です。加藤さんは、スタミナの容量を大きくすることと、ペース配分を守ること、最後は「気持ち」だ、とおっしゃっていました。

佐藤さんも「まったく一緒」とおっしゃっていて、呼吸を深くしたりして限界に挑戦しつつも、最後は気合いだとのことです。何回か聞きに行くと、ピアニストの集中力や体力の限界がきた瞬間は分かるようになるそうで、そこに人柄がにじみ出るそうです。

次の質問は、「自分を客観的に見るとはどういうこと?」というものです。佐藤さんは、弾きながら、苦戦・格闘していると言います。自分の感情をピアノに載せられていないなと思って載せることの方が重心を直すことよりも難しいそうです。また、途中で雑念がよぎってそれまでうまくいっていたのに最終的には失敗してしまったこともあるそうです。
加藤さんは、自分が出来ることと出来ないことを知り、出来ることで勝負すべきだと言います。そのために、練習で出来ることの引き出しを増やしておき、計画がうまくいかなかったときに他の引き出しを使えるかが大事なのだそうです。


いかがですか? プロの緊張感が伝わってきたでしょうか? それぞれ独自の領域ですが、大事なことが深いところで共通していたということは、とても大きな発見でした。実は「何もしていない(ように見える)とき」こそ大事というのは、他の仕事にも共通することなんじゃないか、ということも、ふと思いました。これからもそんな不思議な発見に立ち会ってみたいと思います!

2016年3月21日月曜日

拳闘家×音楽家 ―第2部 指導―

「力を抜く」ということはピアニストにとってもボクサーにとっても重要ですが、ピアニストとボクシングトレーナーのおふたりはどうやって身体の力の抜き方を教えているのでしょうか。

ピアニストの佐藤さんは、日常生活の何気ない動きにあてはめてみるとのこと。

たとえば、子どもに教えるときには、自然な歩き方と変な歩き方をみせて、自然に歩いているように指をパタパタ動かしてみて、と伝えてみるようです。
大人の生徒さんの場合には、「野口体操」という脱力のエクササイズをしてもらうこともあるようです。


ボクシングトレーナーの加藤さんからは、素人だと、「スピードが早いと良い」と勘違いして、力が入ってしまうとのお話。

技術がないのにスピードを出そうとすると力みが出るので、スローでやってみることからはじめることが重要とのこと。
身体がコントロールできるようになってきたら、「そろそろスピードを出してみましょうか」という感じで導くようにしているそうです。

すると、佐藤さんも、ピアノでもゆっくりにしてみたり、分解してみることはよくあるとのこと。身体に覚え込ませてから、スピードをあげる、というのはご自身の練習でも実践されているようです。

おふたりとも「力を抜きなさい」というのではなく違う文脈に置き換えて伝えているというところが興味深かったです。

続いて、生徒さんや選手が自分のイメージ通りに動いてくれないとき、どう伝えるのか、という話題にうつりました。

佐藤さんは、語彙力が重要で、同じことを手を変え品を変え、いろんな言葉で表現すれば、そのうちどれかがヒットする、とのこと。

やはり日常生活の中のアクションを言葉にするのがよいようで、たとえば、女性の方の場合、「掃除機かける腕みたいに動かしてみてください」や「ドアノブをまわす手みたいに手首を使ってみてください」などと伝えてみるようです。

いっぽう、加藤さんは、(ご自身はフェンシング未経験だそうですが)、「フェンシングのイメージでついてみて」など、イメージを伝えることで、まっすぐパンチが出るようになる、という例を紹介されました。

佐藤さんも、瞬発力で音を出してもらいたいときは、「ボクシングのパンチみたいに打ってみてと」助言されることがあるようです。

さらに話題は「はまった教え方」と「失敗した教え方」に。

加藤さんは、事前にビデオで研究して、相手を思い通りに動かさせないような戦術を考え、それがはまったことがあるとのこと。

時には、選手が組み立ててきた戦術と違うことをしてしまうこともあるようです。
ボクシングでは、ラウンドの間に1分間の休憩があるのですが、その間に修正できることもあれば、逆にずれていってしまうこともあるので、休憩の間にかける言葉には気を付けないといけない、とお話されました。



佐藤さんの場合、3歳の子には物語仕立てにして「お日さまがぽかぽかしていて」というような比喩で伝えたときに、「わかってくれた!」という音が返ってきて、うれしかったとのこと。

いろんな比喩で伝えてみても、一切通じない大人もいるとお話されました。
「零点何秒、この音を伸ばせばいいんですか」などと理論的に確認したり説明しようとする方がおられるけれど、それは音楽ではない、と思われるようです。

繊細な身体の動かし方のイメージを、ことばで具体的に伝えるために、おふたりがさまざな工夫をされていることが印象的でした。

このあと、話はプロフェッショナルのみる目にうつり、玄人からみたプロの凄さについて語っていただきました☆






拳闘家×音楽家 ―第1部 実践―

記念すべき第1回目のゲストは、ミサコボクシングジムチーフトレーナーの加藤健太さんとピアニストの佐藤美和さん。

 お二人ともボクシングトレーナーとピアニストを生業とするプロフェッショナルです。 企画者3人が連絡をするたびに「すごく楽しみです!」と言い続けていたため、余計なプレッシャーをお二人にかけていたという配慮に欠けた(?)状況の中、果たしてどのような展開になるのでしょうか?

佐藤美和さん/加藤健太さん

会場には総勢25名の予想を超えたたくさんのお客さんが来てくださいました!
来場者は音楽家からボクサーに始まり、看護師さん、大学生、編集関係、会社員の方などさまざま。


今回の司会を務めた磯野による人類学的的な身体の見方についてのイントロダクションの後に、「第1部-実践編―」の開幕です!



「プロとして一段レベルが上がったと感じた瞬間は?」

これは企画側がぜひとも聞いてみたいと思っていた質問の一つ。仕事でもスポーツでも、自分のレベルが上がったという実感があるはずです。プロはどんな瞬間に自分のレベルの向上を感じているのでしょうか

まず質問をふられた佐藤さんが、会場が「へーっ」とどよめく解答をしてくださいました。

佐藤さんにとってのその瞬間は、イタリアでのコンクールに出場した際のこと。この時佐藤さんは、弾いている自分を外からもう1人の自分が眺めているかのように、客観的に自分の感情を出し入れすることができたそうです。

それまで佐藤さんは、感情がうまく入ったら大成功、でもうまく入らなかったら大失敗という、「ばくち的」な演奏をしていたそうです。しかしこの時は、自分自身でその感情をどうするかをコントロールすることができた。

これが佐藤さんが、プロとしてやっていってもよいのではないか感じた瞬間だったようです。

ピアニストは役者と一緒で、台本の代わりが楽譜というような側面があるとのこと。音楽にあまり親しみのない人には「???」という佐藤さんのはじめの答えでしたが、佐藤さんのわかりやすい解説で一同納得の開幕でした。
生まれて初めて(演奏中に)自分の感情をコントロールできた


一方の加藤さんは、ご自身の試合動画を使いながら解説をしてくださいました。加藤さんが自分のレベル向上を実感した瞬間は、初めての負けを経験した次の試合であったとのこと。

デビューしたばかりのころの加藤さんは、試合前に作戦を考えていても、ゴングが鳴って相手と実際に拳を交えると、一種にしてそれを忘れてしまい、とにかく近づいて殴るといった、相手が何をしているかはほとんど考えられないという試合が続いていたそうです。

しかし敗戦を挟んで迎えた試合では、「この態勢であれば相手はこのパンチしか出せないはずだから、それが来たらディフェンスをして打ち返そう」という一瞬の判断がありました。

写真がその瞬間の動画。早すぎてよくわからないので、スロー再生にして解説をしてもらい、はじめてそれがどういうことかわかりました。佐藤さんと同様に、素人が観ていたら絶対にわからない瞬間のお話です。

ご本人の動画解説付きでその瞬間を会場も一緒に体験

お二人の話を伺って思ったのは、活躍する領域は全く異なるにもかかわらず、レベルが上がった瞬間には「感情」であるとか、「自分とは異なる他者」であるとかいった、それまでどうにもならなかったものが「どうにかなった」体験をお二人ともされいることです。

自分は演奏や試合の紛れもない当事者であるにもかかわらず、それに飲みこまれるのではなく、自分が置かれた環境を積極的にコントロールしてゆくこと。

これはどのプロフェッショナルにも共通する重要な体験なのかもしれません。

みなさんもそのような体験をしていることがあるのではないでしょうか?

このお話し以外にも、重心の作り方などプロの実践を大変わかりやすく、そして楽しく解説してくださり、会はそのまま2部の「指導」に入りました。


 おまけ

会場になったテンプル大学は、港区にあるのに全部英語で授業が行われるという大学。構内は英語だらけで、日本語だからポスターが目立つというプチ海外な状況が起こっていました。 


日本なのにオンリー・ジャパニーズなカフェのポスター