2016年3月22日火曜日

拳闘家×音楽家 ―第3部 見る―

第3部のテーマは、「見る」です。

同じ動きを見ていても、プロと素人では、見ているポイントや深さが違うものです。なんと2人のプロは、「何もしていない(ように見える)とき」が大切だそうです。なぞなぞのようですが、どういうことでしょうか??

まず、「プロはどういうところを見ているか?」という質問から。

ピアニストの佐藤さんによると、最初の音を出す前に集中力を高めて、その場の空気をどれだけ支配できるかが大事だそうです。また、ピアノの音は打鍵した瞬間が一番音が大きくその後は小さくなるだけですが、消えていく音をを聞き届けられるかどうかも大事だとのことです。

この話を聞いて、元ボクサーでトレーナーの加藤さんは、「まったく一緒だ!」と驚いていました。加藤さんによると、パンチが当たったかどうかの前に、相手がパンチを出せず、かつ自分はパンチを出せる場所をとる(=ラインを外す・軸をぶらさない)ことが重要なのです。つまり、互いにパンチを出さないでいる試合は、実はとても濃い闘いが展開されているのです!

ついつい激しい指や拳の動きに注目してしまいがちですが、「何もしていない(ように見える)とき」って大切なんですね☆


そこで次に、ズバリ、どこをどう見れば深くプロ的に楽しめるのか、おすすめの情報と合わせて紹介してもらいました!

佐藤さんは、速い曲よりもゆっくりの曲を聞き比べた方が演奏家の差が出やすいのでいいのではないかと提案してくれました。
おすすめのピアニストは、アンヌ・ケフェレックさんです。ケフェレックさんは、当日上映した映像に映っていた人で、5月の連休に東京滋賀で公演があります。佐藤さんご自身の、ピアノとダンスからなる公演は9月の予定ですが、日程は未定です。気になる方は、佐藤さんのブログをチェックしてください!

続いて加藤さんは、いかに軸がぶれないように選手が工夫しているかを見ることを提案してくれました(それを見られるようになると退屈しない!)。おすすめの選手は、ギレルモ・リゴンドウ選手です(試合の様子はyoutubeにたくさんあります!)。現役の選手では、加藤さんが所属するボクシング・ジムの小原佳太選手です。小原選手の次の試合は4月14日に後楽園ホールで開催されます。


最後に、質問コーナーです。

最初の質問は、「本番でスタミナ切れを感じたときにどうコントロールするの?」です。加藤さんは、スタミナの容量を大きくすることと、ペース配分を守ること、最後は「気持ち」だ、とおっしゃっていました。

佐藤さんも「まったく一緒」とおっしゃっていて、呼吸を深くしたりして限界に挑戦しつつも、最後は気合いだとのことです。何回か聞きに行くと、ピアニストの集中力や体力の限界がきた瞬間は分かるようになるそうで、そこに人柄がにじみ出るそうです。

次の質問は、「自分を客観的に見るとはどういうこと?」というものです。佐藤さんは、弾きながら、苦戦・格闘していると言います。自分の感情をピアノに載せられていないなと思って載せることの方が重心を直すことよりも難しいそうです。また、途中で雑念がよぎってそれまでうまくいっていたのに最終的には失敗してしまったこともあるそうです。
加藤さんは、自分が出来ることと出来ないことを知り、出来ることで勝負すべきだと言います。そのために、練習で出来ることの引き出しを増やしておき、計画がうまくいかなかったときに他の引き出しを使えるかが大事なのだそうです。


いかがですか? プロの緊張感が伝わってきたでしょうか? それぞれ独自の領域ですが、大事なことが深いところで共通していたということは、とても大きな発見でした。実は「何もしていない(ように見える)とき」こそ大事というのは、他の仕事にも共通することなんじゃないか、ということも、ふと思いました。これからもそんな不思議な発見に立ち会ってみたいと思います!